ものがたり
妖怪たちのうたうころ
新章ー勧酒ー
昭和20年(1945年)大分空襲
7月17日の0時10分頃から1時40分頃にかけ、
大分県大分市に米国機による空襲が行われた。
第二次世界大戦では海軍の大分航空基地などが
あったため、幾度となく空襲の標的となったのだ。
甲斐正孝20歳、本来ならば赤紙が届き戦争へ行かねばならないはずだが、
発達障害により戦力外とされ、
近所から後ろ指を刺されながらも
母聡子と二人慎ましく暮らしていた。
ある時、いつもより激しい空襲に正孝と聡子は
防空壕へ逃げ込む。
だが逃げ込んだ先の防空壕の入り口が爆風により
崩れ塞がってしまう…
時は流れ朔太は20歳に。
剣道部として大学で汗を流しているところへ
祖父倫太郎が急病との連絡が入る。
急いで東京から大分は湯布院へ帰った朔太を
待ち受ける運命とは。
神に祭り上げられてしまった哀れな男
神と人間の密接な関わりを良く思わない八幡大神
幸福というものが憎くて仕方がない蛭子
友達が欲しいひとりぼっちの半妖
京都鞍馬山より大天狗も舞い降りて…
お馴染みの妖怪たちと素敵な春休みを過ごせたはずの
朔太は自分と大切な人たちの居場所を守り、
祖母溯子との約束を果たせるのか。
この杯を受けておくれ
どうぞなみなみ注がせておくれ
花に嵐の例えもあるぞ
「さよなら」だけが人生だ
(于武陵「勧酒」、井伏鱒二訳)
音楽劇「妖怪たちのうたうころ」新章〜勧酒〜
ここに開幕。
父と母の離婚により
自分の居場所を失ってしまったような日々を送る
高校2年生の凪朔太(なぎ さくた)は、
夏休みの登校日に幼馴染である坂下光(さかした ひかる)が
陰湿な虐めをクラスメイトから受けていることを知り、
自分のフラストレーションをぶつけるように
教室で暴れてしまい、学校から謹慎を受ける。
母、凪瞳子(なぎ とうこ)は
地元大分県は湯布院にいる祖父の
凪倫太郎(なぎ りんたろう)の元に朔太を預ける。
倫太郎の元でしばし暮らすこととなった朔太は、
頑固で無口な倫太郎とも打ち解けられず
悶々とした日々を過ごす。
秋を目前とした暑い日の夜、
寝苦しくなかなか寝付けない朔太の耳に
祭囃子が微かに聞こえてくる。
その祭囃子に惹かれるように
倫太郎の家の目の前の森に入ってゆくと、
妖怪たちが楽しそうに踊れ歌えと酒盛りをしていたのであった。
妖怪たちに驚きを隠せない朔太だったが、
妖怪たちも人間である朔太が
自分たちのことが見えることに驚きを隠せない。
だが倫太郎とその妻であった朔子(さくこ)も
妖怪たちとかつて友達であったが、
朔太がその孫だと知り、妖怪たちは朔太を受け入れ、
朔太も会ったことのない祖母、
朔子と倫太郎の話がもっと聞きたくなり、
二日後に催されるという妖怪たちの秋祭りに
倫太郎を招待することを請け負うことで妖怪たちと結託する。
一方、妖怪たちの時間軸と時の進み方が違う人間の世界では
朔太が失踪して三日が経っていた。
倫太郎は瞳子に電話をし、瞳子は光に電話をし、
どこにも朔太がいないことがわかり、
光は自分のせいかもしれないと
急いで東京から大分は湯布院へ向かう。
秋祭りを妖怪たちと楽しく準備をする朔太は、
その山(由布山)の長である妖怪の清から
倫太郎と溯子の馴れ初めや駆け落ちを手伝った話、
瞳子が生まれたことや溯乃が亡くなってしまってから
倫太郎が自分たちが見えなくなってしまった話を聞く。
また妖怪たちの秋祭りとは、収穫を祝う祭りだけでなく、
送り盆で帰ることのできなかった魂を
天へと還してあげるための祭りなのだとも。
妖怪たちはずっとずっと、倫太郎の側で見守ってきており、
倫太郎ともう一度でいいから話がしたいのだと言う。
朔太は妖怪たちの思いを受け、次の日の夜遅くに
倫太郎の家の縁側に秋祭りへの招待状を置く。
倫太郎は翌朝その手紙を見て驚き、考え、その晩
東京から駆けつけた光と共に秋祭りに行くことを決める。
秋祭り当日の夜、
朔太と妖怪たちで考えた新しい盆踊りや
人間の世界にあるような屋台が並ぶ中
倫太郎たちがやってくる。
妖怪たちが見える光は驚き声も出ないが、
光がきてくれたことが嬉しい朔太は
光の手をとって屋台を案内してあげようとするが、
妖怪が見えない倫太郎は朔太が
自分を騙そうとしてのではないかと怒る。
そうではないと弁解するが、帰るぞの一点張りの倫太郎。
妖怪たちも哀しげにしていたそんな時、
浴衣姿の美しい女性が倫太郎を後ろから抱きしめる。
その女性こそ溯子であった。
毎年毎年お盆に倫太郎の元へゆき、帰りたくないと
あの人の側にいたいと駄々をこねる溯子を天に還すため
妖怪たちはこの時期に祭りを開いていたのであった。
溯乃の存在に触れ、倫太郎は
抱きしめているのが溯乃だとわかり動きが止まる。
そんな倫太郎の手を朔太は取り、
清の手に触れさせると倫太郎にも妖怪が、
溯子が見えるようになる。
二人の再会とまた会えた喜びを分かち合う妖怪たちと
倫太郎、溯乃。
朔太は光と和解することができ、夜が明けようとしてきた。
妖怪たちは倫太郎の側に朔太もずっといればいい、
俺たちの側にいればいいと言うが、
朔太は毎年この時期に必ずここに光と来ることを約束し、
倫太郎は溯子と死に際に伝えられなかった想いと共
に別れを言うことができ、
朔太たちは倫太郎の家へと帰ってゆく。
さあ、踊り、歌いましょう!
一夜限りのこの命を。













